プロレス八百長論・・・01

私は小学校の低学年からプロレスを観ている、およそプロレス観戦暦30年の熱狂的ファンである。 
この日記のコーナー、日々の出来事と酉社の連載ではちときつくなってきたので、何度引退しても何度もカンバックしてくる大仁田厚のように何のポリシーもなく、新しい連載を始める事にした。 

表題の手記は、酉社時代に私が発行していた社内報に連載していたものであるが(どんな会社だ!)改めて書き下ろしである。 

まず始めに言っておくが、プロレスは八百長である。 
30年以上の観戦暦を持つ私が言うんだから間違いない。 

よく「あんなに血が出たら大変」とか「ロープに振ったらどうして戻ってくるの?」とか言われる。 
だって八百長だもん(^^; 

第一回目の今回、プロレスのインチキ臭さをインチキだとはっきり肯定した。 
今までプロレスってインチキ臭いと思って敬遠していた皆さん。これで心置きなくなんの迷いも無くプロレスが観れますね(* ^ー゚) 
さ、元々作り物であるドラマが大好きなあなた! 
早速観てみましょう!


プロレス八百長論・・・02

Q1.ロープに振ったらなぜ帰ってくるんですか? 
A1.相手の技を受けるためです。 

Q2.トップロープからボディプレスをして相手にかわされると仕掛けた方が凄い痛がってますが、かわされなかったときと痛さはあまり変わらないんじゃないでしょうか? 
A2.変わりません。むしろ障害物無くちゃんと受身が取れるので痛くない場合もあります。失敗しちゃった気まずさをごまかすために必要以上に痛がっているだけです。 

Q3.突然、予想外に乱入してきたレスラーにちゃんとスポットライトがあたるのはなぜですか? 
A3.そう台本に書いてあるからです。 

なぜこんなことが・・・ 

答えは簡単です。 
プロレスラーは「プロ」であり、試合は「興行」なんですね。 
プロが興行で稼ぐにはどうしたらいいでしょうか? 
魅力のある試合であることはもちろんですが、それよりもむしろ「また次回も行こうかな?」と思わせる事。つまりビジネスの基本である「リピーター」を多く作る事が、すなわち興行が成功する、という事なんですねぇ。 

本気で殴って相手が怪我したらどうしますか?相手は職場の同僚です。相手がいなくては試合が成立しません。 
でも殴ったフリじゃバレバレです。 
投げたフリしてそぉっと置いたらバレバレです。 
どうしたら本当に殴っているように見えるんでしょうか? 

そこでプロレス興行には、いわゆる「お約束」が必要になるんです。


プロレス八百長論・・・03

プロレスラーは何が凄いか? 
一言で言えば「受身」が凄いと言い切れる。 

プロレスは格闘技である。 
格闘技は普通、相手を倒すための競技である。 
もちろんその精神は「自分の身を守るため」とか言うが、勝敗を決めるためには相手に負けない事ではなく勝つ事が絶対に必要である。 
だからどんな格闘技も相手を倒すために技を磨く。 

むろんプロレスも相手を倒すための技を磨く。しかしプロレスで最も重要なのは、その技をあえて受けることなのである。プロレスラーにとって勝ち負けは重要なことのひとつではあるが、最も重要ではない。 
重要なのはその興行の成立であり、集客であり、報酬を得る事であり、もう一回観に来てもらう事であり、そのときにもリングに上がれる事であるのだ。 

例えば相手を逆さまに頭から落とす技がある。 
パイルドライバーとかブレインバスターとかパワーボムと言われる技がそうだ。 
普通に考えたらそんなことされたら死んじゃう。 
だって頭から落っこちるんだから。 
でもプロレスラーは、決して平気とは言わないが、その技をあえて受けてしまう。 

その技が死んじゃうかもしれない技だったら、私なら、どんなにかっこ悪くたっていいから、ジタバタ暴れて屁を相手の顔に吹きかけてでも、おしっこを漏らしながらでも逃げる。 
相手が技の体勢に入っただけでビビッて逃げる。そもそもリングに上がらない(^^; 
でもプロレスラーは、投げられるのを待っているかのごとく投げられてしまう。 

なぜか? 

もうお分かりですね? 
投げられるのを待っているのだ。 
むしろ怪我をしないためには、変に暴れて斜めに落とされたりしないように、万全な受身を取るために、なんなら相手が自分を持ち上げるタイミングで、ちょっとジャンプして相手に協力してでも、自分の"間(ま)"で投げてもらえるように構えているのだ。 

これがお約束のひとつ。


プロレス八百長論・・・04

プロレスの興行は20〜30日くらいをワンクールとして、それを年に数セット行う(これをシリーズと言う)。 
その開幕戦と最終戦を東京で行い、それ以外は地方を巡業する、というのが一般的。 
普通は最終戦にタイトルマッチが控えていて、シリーズ前に対戦(カード)が発表になる。大抵は前シリーズの最終戦で次のシリーズの伏線がはられる。 
そして開幕戦から挑戦者はタッグマッチでチャンピオンと対峙し、タイトルマッチ意識しまくりの試合展開となる。場外乱闘で試合そっちのけで挑戦者とチャンピオンがやりあう、とかね。 

それから1日の試合も第一試合の若手の地味な試合に始まり、中をベテランのエンターテイメントで盛り上げ、メインイベントまで観客の意識をだんだんと高めていく。まるでコース料理を楽しむかごとく、前菜あり、魚あり、肉あり、デザートあり、と各メニューがしっかりと自分の役割を把握してアピールしてくる。 
いきなり肉を食わせるコースも、最後がしょぼーいコースも、駄目なのと同じで、プロレス興行も1日の試合全体を通してお客は満足するのである。 

これすなわち、各試合を真剣勝負でやったりしたら、成立しないのである。 
もう一回言おう。 
プロレスラーは「プロ」であり、興行を成功させる事で会社は利益を得て、レスラーたちは報酬を得る事ができるのである


プロレス八百長論・・・05

もう一つ、プロレスが他の格闘技と大きく違うところがある。 
それは「ストーリー」である。 
プロレスの最大の面白さは試合の結果ではなく過程なのだ。 
また、誰が一番強いかではなく、やっぱり過程なのだ。 

試合で言えば、ゴングからまずはお互いのスタミナを奪う寝技・間接技の展開。やがてロープワークや打撃技を経て投げ技に展開。時に場外乱闘や反則をスパイスとして入れながら、最後は大技の応酬。と思いきや一瞬の隙を突く固め技で決着。 
という具合。 

興行で言えば、最近実力を上げてきた若手。彼は現チャンピオンの元付き人であった。新人時代は基礎はもちろん礼儀作法まで教わったいわゆる弟子である。今履いているリングシューズも以前チャンピオンにプレゼントされたものだ。 
やがて独り立ちしチャンピオンの元を去った彼は、前シリーズ最終戦のチャンピオンの防衛戦後にリングに乱入し、時期シリーズでの対戦を迫った。チャンピオンは驚いたような、でも少しうれしそうな表情で対戦を受諾した。 
今日はその開幕戦、彼はどんな戦法でチャンピオンに望むのだろうか? 
ゴングと同時に飛び出した彼はチャンピオンにいきなりのタックル。そのまま場外へ突き落として、意外な事に客の椅子を使ってのメッタ打ちだ。挑戦者に遠慮は無い。高揚した表情からは過去の師弟関係など微塵も感じられない。 
一方のチャンピオンは動揺を隠せない。 
この間まで自分の面倒を見ていたあの坊やが、、、 
しかしさすがに百戦錬磨のチャンピオンだ。立ち上がった顔からはすでに動揺は感じられない。完全に戦闘モードの、いつもの強いチャンピオンの表情に戻っている。 
二人は再びリング中央でがっちりと組み合った。。。 

と、こんな具合。 
これ、私の作った全くのフィクションであるが、これを実写で観たいと思いませんでした?今。 
続きはどうなったの?って思ったでしょ? 

じゃあ、やってもらいましょう。 
プロのレスラーたちに。


プロレス八百長論・・・06

プロレスには台本がある。 
通常、これが一般の人間の目に触れる事は絶対にない。 
しかし昨年の「ハッスル」の台本がマスコミにばらされ大きな話題となった。 

その記事の内容はうろ覚えであるが、入場の段取りはもちろんとして試合展開から選手の乱入や勝敗まで書いてあった、というのだ。 
またその記事中の関係者の話として「進行台本は確かにある。しかし勝敗まで書いてあるというのは見た事無い」と。 
この事実に絡んだ人間が「ハッスル」のよりによって元祖格闘路線団体、元UWFの高田総統であったから驚いた。 

UWFとはプロレスを否定する事によって、つまり真剣勝負が大前提であることで絶大な人気を得た団体である。ロープに飛ばない。3カウントフォールが無い。 
徹底的に脚色を排除して現在のK-1とかプライドのさきがけとなったと言ってもいい。 
そのUWFのエースだったのが若かりし日の高田信彦なのである。 
その高田信彦が台本に従っているのだ。 
今になってプロレスを認めたのか? 
従わざるを得ないほど金に困っているのか? 

時代も変わったものだのう・・・


プロレス八百長論・・・07

また他の格闘技には絶対ありえないプロレスの特徴を思い出した。 
反則だ。 
この反則、5秒以内ならなんと許されている。 
その5秒もレフリーのサジ加減で、長い人もいれば阿部四郎並に早い人もいる。 
(最近、めちゃイケにでたらしいね(^^;>阿部四郎) 

それから場外乱闘とか凶器も他の格闘技には無い。 
なぜか? 

プロレスラーには節度があるからだ。 
【節度】 
 言行や行動などが度を超さず、適度であること。ちょうどよい程度。ほど。 
 「―をわきまえる」「―ある振る舞い」 

例えばボクサーに石を持たせてみよう。 
例えばK-1選手の靴の先をとんがらせてみよう。 
例えば剣道の選手に真剣を持たせてみよう。 

ほら、惨劇が。 

レスラー同士に暗黙の了解が無くては、危なくて試合が成立しないのである。


プロレス八百長論・・・08

反則で思いつくのが、凶悪レスラーというやつ。 
この凶悪レスラー、案外リングを降りると良い人っていうキャラが多い。 
古くはアブドーラ・ザ・ブッチャーや上田馬之助など、CMやバラエティで「実は良い人」というキャラが明かされた。 
しかしそうでない人もいる。 
試合中ならまだしも路上でプライベートの猪木を襲ったタイガージェットシンや、アラビアの怪人ザ・シークなどは根っから悪と言われている。 
初期のFMW時代の大仁田とシークの抗争は激化していた。 
負けたら追放マッチをよくやっていた。 

しかし、よく考えてみてみると、、、 

路上でプライベートの猪木が襲われたとき、なぜ東スポの記者はその場面の写真を撮ることが出来たんだろう? 
追放マッチって、大仁田は社長兼プロモーターなんだから、本当に追放したいなら呼ばなきゃ良いじゃんねぇ。 

悪役レスラーこそ、プロ中のプロなんである。


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